古都トレド
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濃霧
突然の霧でバスの前はミルク色、視界はまったくない。バスは自転車並みのスピードに減速して手探り状態でとろとろ進む。コルドバから1Hも走らないうちにこんな状態になった。低い山ですが朝日が当たって温度が急激に上昇したとたん濃い霧が発生するようで時々こんなことがあるそうです。それでも10分ほどで何事もなく霧の中を通過してバスは休憩所に滑り込みました。
 この後、ラジオnewsではトレドとマドリッドの間で同じころひどい濃霧の中、車数十台が玉突き事故にあって多くの怪我人が出ていると放送していました。また、後でわかったことですが私たちと同じような日本からのツアー客のバスも事故に巻き込まれたようです。
シェラモレーナの山越えを前に一休み
コンセーグラの丘
中世の城砦と風車が並んでいました手前のブロック状のものは飼料用の干草を固めたもの、雨が少ないためか露天に置かれています。この周辺ではよく見る光景でした。
コンセーグラの城砦 
コンセーグラ近くの現代の風車

古都トレド
深い谷を挟んだ南の展望台から眺めたトレドの全景(上)
あの、エルグレコが描いたトレドの絵と同じ光景が目の前にありました。少し靄がかっかっていますが快晴のトレドです。

東から流れてきたタホ河がトレドの街が載っている巨大な岩盤にさえぎられてその南を迂回し深い渓谷を穿って西に向かって流れています。タホ河はイベリア半島の中央を東西に横断してポルトガルのリスボンで大西洋に注ぎ込んでいる長さ1007kmの大きな川です。この川の水資源をめぐって下流のポルトガルと時々諍いが起こるそうです。また、上流域の工業排水による汚染問題も厄介なことになっています。
Eローマ時代の競技場跡 Sアルカンタラ橋 22コメルシオ通り 26シナゴーグ 29サンファンデロスレイエス修道院toGoogle-map
トレドが歴史の中に初めて出てくるのは前190年にローマ軍が城砦集落であったここを攻略したときです。そしてローマは現在アルカサルが立つ場所に軍本営と役所を作ってその周囲を城壁で囲みました。現在残っている城壁よりだいぶ狭い範囲でトレドの最も高い場所にありました。現城壁の外の公園からはローマ時代の競技場跡が発掘されています。
 その後西ローマ帝国が崩壊して西ゴート族がイベリア半島を支配することになり569年にトレドを首都にしました。それに伴って、トレドの大聖堂がイベリア半島全体の首座大司教座を占めることになります。
 その後イスラムによる支配を経て、1085年カスティーヤ王国軍によって奪還されカスティーヤ王国の支配に入り、1561年にマドリッドに首都が移されるまで長い間、イベリア半島の都として栄えていました。

 ここは、エルグレコの名前を忘れることはできません。エルグレコの様々な絵画とともに、彼が描いたトレド街の姿は記憶に残るものです。 
アルカンタラ橋 Puente de Alcantara
東、西、南の三方向をタホ河で囲まれたトレドにはアランフェスに通じる東の橋アルカンタラと西のカセレスに通じるサンマルティン橋が架かっています。南側は谷が深くなっていて橋がありません。
アルカンタラ橋とサンセルバンド城
アルカンタラ橋 Puente de Alcantara
サン・セルバンド城 Castilla de S.Servando
タホ川に架かるアルカンタラ橋の向こう岸に古城サン・セルバンド城が見えてきました。
古都トレドの全景
カテドラル(右)中央のドームはサン・ファン・バウティスタ教会
アルカサル
タホ河の断崖の上の「慈悲の会」病院
アルカサル下の船着場
西の古い砦跡
 トレド旧市街  世界遺産
タベラ病院 Hospital de Tavera
16世紀の建物、大司教ファン・デ・タベラが創設した病院。一部が美術館になっていてグレコやティツアーノなどの作品があります。
アルカサル
ローマ時代に宮殿があった場所で、アルフォンソ6世やアルフォンソ10世の時代に改築され、16世紀に今の形になりました
コメルシオ通り
トレド旧市街の目抜き通り旧市街全体が世界遺産に登録されているので、建築物の改造や取り壊しなどに対して厳しく制限されています。建物の高さや壁の色はもちろん、出窓の鉄格子や手すりなどの細かい部分までそのデザインや材料も基準を満たさなければならないそうです。このような古い町を昔の景観を損なわずに維持するためには建築関係のさまざまな職人の技も維持していかなければならないという当然ながらの大きな課題もあるのですね。
ファッション関係のお店などに混じってナイフや鉄器を扱う金物屋さん、ショウウインドウには騎士が身につける鎧兜などを飾っているお店が軒を並べています。ちなみに、ガイドさんの話ではトレド産のナイフが米国の軍隊で採用されているそうです。ナイフはスイスが定番ですがトレド産も良品なんですね。
大聖堂 Catedral  
「大時計の門」
1226年にフェルナンド3世の命により建築が開始され、1493年に完成したゴシック様式のカテドラル。聖具室にはエル・グレコの『聖衣剥奪』や『十二使徒』などの絵画が飾られています。!
観光客の通用門。入り口を入ると内部は完全に撮影禁止。残念!
鐘楼(左)と免罪の門
内部の写真撮影は禁じられていましたので現地で購入したガイドブックから転載させてもらいました。
photo:Fernando Garrido, oronoz,Jose Ramon Martin, Mario Gutierrez
カテドラル 中心身廊 Capilla Mayor
祭壇の飾り衝立(Retablo)
豪華なレタベルの一番上に磔にされるキリストの像、その下には新約聖書の物語を表した群像があります。キリスト像の高さはなんと3.5mもあるんだそうです。実際に見上げるとはるか上のほうにあるものですから小さく見えます。彫刻は木製で金メッキされ輝いています。
聖歌隊席の格子
鉄格子がすばらしい。現在でもトレドは鉄器や刃物、など鍛冶職人が多くいいものができるようです。名工ドミンゴの手になる飾り格子   Maestro Domingo de Cespedes
聖歌隊席 (Coro) 
聖歌隊席の造りが立派なことはセビーヤやコルドバでも見てきましたが、こちらの大聖堂もイベリア半島の主座を占めた聖堂にふさわしい見事なものです。スペインには良い職人がいたんですね。72脚のウォルナット製の椅子は上下2段になっていて、上段にはレコンキスタの過程の状況を表しています。下段の方は16世紀に南側をAlonso de Berruguete が北側を Felipe Vigarniが設計しています。椅子の上のレリーフにはアダムとイブから始まるキリストに縁のある人物像が浮き彫りににされています。そして正面の紋章の上にある白い彫刻はアラバスターのひとつの石から彫りだしたものといいます。入り口近くあるアラバスタ製の白いマリア像は1300年の作品。
サン・イルデフォン礼拝堂 主祭壇裏の小礼拝堂
仰々しい(失礼)主祭壇よりこちらのほうが素敵です。透かしTransparente)天井から陽が差し込んで陰影が見事です。ここにはもともと明かりがなかったのでドームを造り陽を取り込むようにスペインの芸術家ナルシス・トーメ(NarcisoTome)(1690 - 1742) が11年がかりで大改造をしています。彼自身も幾つかの彫刻を自ら制作しています。(1722年完成 トレドにきたらここは絶対に見ておかないと損です。
聖具室にはグレコの描いたエル・エスプリオがありました。
市役所 Ayuntamiento
大聖堂を出ると目の前に市役所の建物があります。歴史を感じさせる古い建物です。両端にある塔の屋根はアルカサルの屋根を模したものでしょうかよく似ています。この広場を斜め右の道に進むと次の目標サント・トメ教会です。
サントトメ通り
昔の町並みが忠実に保存されています手前の看板はトレドの名物マジパン(mazapan)を売っているお菓子屋さん。

サント・トメ教会にあるエル・グレコの
『オルガス伯の埋葬』

エルグレコ自画像
大聖堂から市役所前を通ってサントトーメ通りを進むと左手に教会の塔が見えてきます。14世紀にオルガス伯爵がモスクを改造した教会です。ここにはグレコの名作『オルガス伯の埋葬』(1586~1588年)があります。礼拝堂入り口にあるちいさな玄関ホールのような場所の壁一面にこの絵がかかっています。壁画のように建物と一体化しているようでここから持ち出したことはないそうです。下の半分はレプリカ?がマドリッドのプラド美術館にも展示されていました。    下の絵はwikipediaから
エルグレコの家(左手の建物)  
エル・グレコのアトリエが再現され、『トレドの景観と地図』などの作品が展示されている。 奥の建物はシナゴーグ(ユダヤ教教会)。
http://www.geocities.com/soho/museum/8225/index.html
サン・ファン・デ・ロス・レイエス教会
15世紀末、トロの戦いの勝利を記念してカトリック両王の命で建てられた。ゴシックとムデハル様式が混合したイサベル様式の典型。
城壁
サンマルティン橋
サンマルティン橋
お昼のレストラン
トレド旧市街のタホ川対岸の丘にあるレストラン、前庭が展望台になっていて遠く糸杉越しにカテドラルの鐘楼とアルカサルが見えます。お料理は鳥料理でまあまあでしょうか。オリーブが卓上に皿盛で出ていましたがこれがおいしかったです。しっかり熟したオリーブの朝漬けという感じ。お店は観光客が沢山、モンゴルと日本、韓国のアジアの同胞で埋まっていました。
レストランからの展望
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